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一人カセットテープ

ひとりで聴いて、誰かに教えたくなる、そんな音楽

日常の中で、小さな何かを失ったときに観たい映画

決して「大きな」ものではありません。

「ちょっとした」何かを失ったときにもう一度観たい映画だと思いました。

 

映画の主人公は、最愛のパートナーを交通事故で亡くし、生きる情熱を失った中年男性です。

彼が失ったものはとても大きなものですが、この映画は淡々と進んでいきます。

だからきっと自分が最悪まで落ち込んでいるときに見ても、全く共感できないと思います。

だって悲しいときは主人公に同調して泣きたいし。

辛い気持ちを消化していくために、ただただ大声あげながらブスな顔で泣き続けたいものです。

 

この映画では激しい悲しみや、底なしの喪失感が、とても美しく描かれます。

ここで激情はすでにアートとして昇華されているのです。

「激情」はすでに自分の内面で消化・昇華した「過去」となっているから、観ている人は大きな痛みを感じない。

 

だけどたまに、過去の古傷が痛むくらいの、鈍い痛みを残す出来事に遭遇します。

日常の中で深く落ち込むわけではないけれど、なんだか消化しきれずにモヤモヤしてしまう出来事です。

そんなときに感じる鈍痛を紛らわすために観たいのが、この映画です。

 

監督がファッションデザイナートム・フォード(Tom Ford)です。

主役が英国人俳優のコリン・ファース(Colin Firth)。

主人公が丁寧に身につける上質なスーツや、整頓された書斎、そしてまさに花盛りの美青年たちの姿にため息がでます。

 

とにかく、悲しみが美しく描かれる。

 

アンニュイな気分のときにどうぞ、とオススメしたい気もしますが、

「アンニュイ」なんてオシャレな気分のときに見る映画じゃありません。

 

ちょっと落ち込む出来事があって、ちょっと悲しい出来事があって、ちょっと気持ちが晴れなくて...オシャレする気にならないなぁ。

くらいのときに見るべき映画です。

 

ボサボサの部屋着姿で見ていたあなたは、映画が終わる頃にはシャワーを浴びにいくくらいには前向きになっているはずです。

http://tiny-astrophel.tumblr.com/post/141892786142/benafflecks-but-now-isnt-simply-now-now-is

tiny-astrophel.tumblr.com

 映画タイトル:「シングルマン (原題:A Single Man)」(2009年)